ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



お風呂から上がりおーちゃんにバトンタッチして、髪を乾かし終わったところで、わたしはキッチンに目を留めた。

食器乾燥機に、おーちゃんが夜ご飯のときに使ったのだろう食器が置いてあった。


『昨日、悪かったな』

『……ひとりで食わせて、ってこと』


前にそう気にしてくれていたことを思い出して、一気に自己嫌悪に襲われた。


……申し訳ないこと、しちゃった。

勝手にいじけて、連絡もしないで迷惑かけて……。

でも……。


わたしはそっと自分の口元に触れた。

その柔らかい部分をふに、と指の腹で押せば、さきほどの熱が鮮明に蘇ってくる。

たちまち踊り出す胸に、衝動に駆られて寝室へ行くと、ぴょんっとベッドにダイブした。

ふわりと香るおーちゃんの匂いに、顔を埋める。


……きっとこれは、すごい進歩だ。

片思い歴、約4年。
とうとう『妹』から、『女の子』に昇進できたんだ。