ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



「……大丈夫か?」


微かに触れ合ったまま囁かれて、息がくすぐったい。


だいじょばない。

こんなキス、知らない。
こんな……大人な、キス。


わたしは涙ぐんだ目で、ぼんやりとおーちゃんの顔を見上げた。


「……苦い……」

「……」


思わずこぼれた第一声にポカンとしたおーちゃんが、手元のコーヒー缶を見て、苦笑した。