「——あ、あいた」


そんな間抜けな声をこぼした目の前の酔っ払いに、わたしはジトリとした視線を向けた。


「……おかえり、おーちゃん」

「ん、ただいま」


……お酒くさい!


へにゃりと顔を緩めたおーちゃんに思わず顔をしかめてから、隣のキレイな女の人を見る。

きっと、おーちゃんと同じ会社の人なのだろう。


キレイな女の人は、信じられないものを見たような顔でわたしを上から下まで確認していた。
何かを言いたげに口をパクパクさせているが、あまりの驚きで声が出ないみたいだ。

……そこで、わたしは今、自分がどんな格好をしているかを思い出した。


お風呂上がり。
濡れた髪はそのまま。

下着は身につけたものの、男物のTシャツを1枚着ているだけ……そしてそれが、この部屋の主である樫葉旺太(おうた)のものであることを、彼女は瞬時に理解してしまったはずだ。


よ、よくない状況だ……!


慌てて説明しようとしたけれど、わたしが声を発するよりも先に、彼女が動いた。