……言ってること、全然わかんないよ。
「迷惑なんかじゃ、ないよ。むしろ……」
弄ぶようにすくわれた髪が、はらりと首元にもどってきて、くすぐったい。
満足そうに顔をほころばせたおーちゃんが、もう一度わたしに視線を戻した。
「すげー嬉しい」
耳元に響く声に、なんだかふわふわする。
わたしの心臓はうるさいくらいに高鳴っていた。
おかしくなっちゃいそうだ。
……へんだよ、おーちゃん。
好きだ、って言われたわけじゃないのに……。
そんな風に見つめられて、そんな風に触られたら、わたし、勘違いしそうになっちゃうよ。
色素の薄い透き通った瞳に吸い込まれるように、手を伸ばして、その肌に触れる。
おーちゃんがぴくりと体を揺らした。
「……お前の手、冷たい」
「……そういえば、ちょっと寒いかも……」
「もう、帰ろう」
そう言って、おーちゃんはコーヒーをぐいっと飲み干した。
空っぽになった缶をへこませて、立ち上がろうとする。
——けれどわたしは咄嗟に、遠のいていこうとするネクタイを掴んで引き止めていた。


