おーちゃんは、駅とは逆方向にわたしの手を引いて歩くと、近くの公園のベンチに座らせる。

そこはまるで先ほどまでいた場所とは世界が違うんじゃないかっていうくらい、周りに人気はなく、静まり返っていた。


「ほら」


目の前にお茶を差し出されて、わたしは大人しく受け取った。

自販機で買ってきてくれたみたいだ。

缶コーヒーを片手に、おーちゃんはわたしの隣に座った。


「……杉本さんに、なにか言われた?」

「すぎもと、さん」


初めて聞く名前を、同じように繰り返す。

説明を求めるように、泣いた後のしぱしぱする目で、おーちゃんを見た。


「今日この近くで会ったって聞いた」


そう言われて、理解する。


カフェで会ったあのお姉さん、杉本さんっていうんだ……。


「おーちゃんがわたしのこと、妹だって言ってた、って」

「……まあ、言ったよ。あの後、会社で詳しいこと聞かれて、嘘ついた。女子高生と生活してるなんて言いづらいだろ」


おーちゃんは苦笑して、コーヒーを飲んだ。