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買いたいものがある、と嘘をついて、美月と駅前で別れたわたしは、なにをするでもなく、ただ近くのベンチに座り行き交う人を眺めていた。

気づけばあたりは暗くなっていて、お店の灯りが街を照らし、空はすっかり黒く染まっている。


……今、何時なんだろ……。


どのくらいぼんやりとしていたのかもわからない。

けれど、時間を確認することすら億劫だった。

少し冷たい空気に肌を撫でられて、体が小さく震える。


……そろそろ、帰らないと。


そう思った時、


「キミ、さっきからずっとここにいるよね? なにしてるの?」


頭上から降ってきた声に、わたしは顔を上げた。

おーちゃんよりも少し若いくらいのお兄さんが、愛想のいい微笑を口元に浮かべて、わたしを見下ろしていた。