そのまま走って、走って、気づいたら駅までたどり着いていて。
タイミングよくやってきた電車に飛び乗ったところで、わたしはやっと息を整えた。


……どうしよう。

今度から、どんな顔をして会えばいいんだろう。


最後に見えた康晴の表情が頭から離れなくて、わたしはふるふると首を振った。

ついさっきまで残念に感じていたクラス替えの結果を、今はありがたく感じてしまう。


発車した電車に揺られるわたしは、空席を見つけて力なく腰を下ろした。
——と。

ポケットの中で、携帯がヴヴヴ、と振動した。


まさか、康晴から……?


おそるおそる画面を確認すると……わたしの予感は、外れていた。

ホッと息を吐くと同時に、表示された名前を見るなりじんわりと仄かな熱が胸に広がる。


〈今日遅くなる〉


けれどメッセージを確認して、今度はがっくし。


……いつも一緒に見てるドラマ、いいとこなのに!


リアルタイムで感動を共有できる相手を失ってしまったことに、わたしは項垂れた。

ふて腐れながら、〈了解〉の文字を力なく打っていると、送信する前に再びメッセージが届く。


〈ドラマ録画しといて。先に見るなよ〉


表示された文章に、思わず口角が上がる。
落ちていた気持ちは、いとも簡単に掬い上げられてしまった。


〈わかった!〉


そう文字を打ち直して、わたしは今度こそ送信ボタンを押した。