「……逃げた」
おかしそうに言うお姉ちゃんにつられて、わたしも思わずクスリと笑う。
「……それじゃあ、話は聞いたんだ。おーちゃんの家に残ることにした?」
「……うん……」
「よかったね、愛花」
微笑まれて、わたしは返答に迷ってしまった。
ここに来る途中で、おーちゃんがわたしを引き続き預かりたいと、お姉ちゃんと叔母さんを説得したことを聞いた。
「話をつけてきた」とは、このままわたしがおーちゃんの家で暮らすことの許可をもらってきた、という意味だったらしい。
わたしは曖昧な笑みを浮かべたまま、視線を流した。
——机の上に置かれたままの、紙袋が目に留まる。
わたしの視線の先に気づいたのか、お姉ちゃんは苦笑した。
「……これ、せっかく愛花が持って来てくれたけど、ごめんね。……渡さなかったんだ」
「……」
「おーちゃんのこと、……わたしに譲るつもりだった?」
わたしは、体を小さくして、頷いた。


