ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-




***



「……緊張してる?」


優しく尋ねてくるおーちゃんに、わたしはコクリと頷いた。

お姉ちゃんの病室を前にして、強張っている体から力を抜くように、ふう、と息を吐いた。


「大丈夫だよ。……お前に会いに行く俺を、見送ってくれたんだし。帰りにお前を連れて来るように言ったのは、結花なんだから」

「でも……」

「言っただろ。話はちゃんと、俺たち同士で済ませたから」


おーちゃんはわたしにもう一度目配せすると、ドアをノックした。

「はあい」と、お姉ちゃんの、昨日よりも穏やかな声が返ってくる。

引き戸が開くと、わたしは、遠慮がちに、ひょこりと中を覗くようにして顔を出した。


「……あ。おかえり」


目が合って、お姉ちゃんは先にそう言うと、ニコリと微笑んだ。

普段と変わらないその笑顔に、ホッと胸を撫で下ろす。


「ただいま……」

「ごめんね。学校帰りに、呼んだりして」

「……ううん」

「ちゃんと愛花とも話がしたくて……。昨日はわたし、すぐに寝ちゃったから」