ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



綺麗な瞳が、わたしを捉えて——、おーちゃんが、ふっと目を細めて微笑んだ。


「愛花」


心臓が、きゅう、と縮こまった。


……だめだ……。


おーちゃんに名前を呼ばれただけで、胸の内で、好きだという気持ちが悲鳴を上げる。


「……どうして、いるの?」


訝しげに尋ねれば、おーちゃんが周りにいた女の子の間を縫って、こちらへ歩み寄って来る。


「こうでもしないと、……お前、俺から逃げると思って」

「……」

「昨日の話、……俺は、納得してないよ。それに……約束しただろ」

「約束……?」


ふたりの間を通り抜けるように、サアッと風が吹いた。

おーちゃんの手元で、ガサ、と音がする。

見ると、その手には、小さな花束が握られていた。


……もしかして、この後に、お姉ちゃんのお見舞いに行くのかな。


そんなことを考えていると、


「——俺の気持ちを、ちゃんと伝えるって、約束」


おーちゃんは、その白くて小さな可愛らしいお花を、わたしへと差し出した。