「それってつまり、おーちゃんと鉢合わせるのが怖くて、マンションにできるだけいたくないからってこと? そんなこと続けてたら、食費がえらいことになっちゃうよ」

「そりゃ、ずっとは無理だけど、……今日は早くに帰りたくないの」

「わたし、今日は無理なんだ。だから康晴を捕まえて来たんだよ。……ね、付き合ってあげてよ」

「だから、お前さ……」


康晴は頭をかかえる勢いで、はあ、と大きくため息を吐いた。


「何が嬉しくて、失恋相手の恋を応援してあげなきゃいけないわけ?」


わたしは康晴の言葉に、バン、と机に手をついた。


「もう、終わったんだってば。応援はいらないの」

「……じゃ、おーちゃんのこと、好きなのはもうやめるの?」

「それは……」


「まだ好きだけど……」とわたしがゴニョゴニョと続けると、美月がほらあ、と声を上げた。


「第一、どうして諦めようとしてるの? おーちゃんも、愛花のことが好きって言ってくれてるんでしょ?」

「でも……。そんなの、おーちゃんがお姉ちゃんの気持ちを知ったら、変わるかもしれないし……お姉ちゃんの方が、おーちゃんにお似合いだし。それに……」


わたしはほっぺたを机にくっつけた。

ぼんやりと虚空を眺めながら、声となって外へ出た自分の言葉に、苦しくなる。