ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



……。

……なんか、ちょっと、怒ってた……?

話、途中で終わらせちゃったからかな……。


申し訳なく思っていると、つん、と髪の毛が引っ張られる感覚がした。

導かれるように隣を見ると、おーちゃんとパチリと目が合う。

おーちゃんは、キョロキョロと周りを確認してから、——わたしをそっと抱きしめた。


「……みんなの前じゃ、こうしたくてもできなかったからな」

「……おーちゃん……」

「やったな、愛花」


とびきり優しい声が頭上で聞こえて、わたしはおーちゃんの腕の中で、うん、と鼻にかかった声を出した。


「お前が、結花の帰りを、諦めずに待ってたからだよ」

「……おーちゃんがいてくれたからできたことだよ」

「……バカ。泣かせるようなこと、言うなよ」

「そっちこそ……」


わたしを受け止めてくれているおーちゃんの胸に、頬をすり寄せる。

病室の中から、こちらに近づいてくる足音が聞こえてきた。

わたしたちがさり気なく離れたのとほぼ同時に、引き戸がガラッと開かれた。