ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



「愛花」


病室からおーちゃんが顔を出して、わたしの思考が途切れた。


「結花のやつ、……少し疲れたみたいで、寝たよ」

「……そっか……」

「……お前、ちゃんと話せた?」

「うん。話したっていうか……ほとんど、泣いてたけど」

「だろうな。……もう、腫れてる」


目の前までやって来たおーちゃんは、手をこちらに伸ばして、前髪をよけ、わたしの瞼に触れた。

冷やしていたからか、おーちゃんの指先をやけに熱く感じる。

触れられる心地よさに目を閉じようとすると、いきなり、隣にいた慎くんが立ち上がった。

おーちゃんを見て、


「ここ、どーぞ」


と、なぜか席を譲る。


「……ありがとう」


少し戸惑いながらも、おーちゃんは、慎くんと入れ違いに腰を下ろした。


「……母さんがさ、愛ちゃんに話があるって」

「叔母さんが?」

「うん。呼んでくるよ」


慎くんはそう言うと、病室の中へと入って行った。