「え……」
「……愛ちゃんはまだ、あのマンションから離れたくないの?」
「……それは……」
——考えたこと、なかった。
わたしは、言葉に詰まってしまった。
慎くんの質問から逃れるように、目を泳がせる。
……あのマンションにわたしがこだわった理由は、お父さんとお母さんの思い出から、離れたくなかったから。
叔母さんたちにワガママを言って、ふたりで暮らすことを許してもらった。
だけど、今は……?
おーちゃんと出会って、前に進むことができて、3人の時間が楽しくて……。
お姉ちゃんが入院して、おーちゃんとふたりになって……。
今はほとんどおーちゃんの部屋で生活しているわたしが、あのマンションに、こだわる理由は——。


