「今日は、何食べたい?」


電車の座席から、前に立つおーちゃんを見上げて聞いた。

上から吹いてきた車内の冷風が、わたしの前髪を微かに揺らした。


「んー、……カレー」


まだどこか眠たそうに瞬きながら「最近、暑いし……」と付け足すおーちゃんに、思わずクスリとしてしまう。


「じゃ、決まり」

「チキンがいい」

「はあい」


今日の献立が決まったところで、丁度、おーちゃんが降りる駅に到着した。

窓越しに手を振って、おーちゃんを見送る。


やがて流れ出した景色に、わたしはそのまま、ぼんやりと外を眺めた。