弱々しい囁きが聞こえたと同時に、後ろから抱きすくめられた。

わたしの手から、バサバサッと荷物がすべて落ちた。

戸惑うわたしを強く閉じ込めたまま、おーちゃんが手を伸ばし——ガチャ、と鍵を閉めた。


「俺がお前にできることなんて、限られてるから……不安を全部吐き出せなんて、言わないよ。……口に出したくないことだって、あるだろ」


泣きたいほど優しい声が、わたしの耳の裏をくすぐったくする。


「言いたくないなら言わなくていい。……ただ、俺に愛想つかしたってだけでも、それでもいい。……だから……」


ぎゅう、とさらに力を込められて、痛いほどだった。


「ここにいろよ」


その痛みがおーちゃんにも伝染しているように、苦しそうに言葉がこぼされた。


「結花が戻ってくるまでで、いいから。……お前がひとりで耐えて、押しつぶされそうになってんの、……見てらんない」


おーちゃんの想いは、嬉しくて仕方がなかった。


「ひとりにしたくない」


わたしも……本当は、ひとりになりたくない……。

……おーちゃん……。


「他の誰かじゃなくて、……俺が、そばにいてやりたいって、思う」

「……っ」


わたしはたまらなくなって、——気がつくと、拘束から逃れて振り向き、その胸へ飛び込むように抱きついていた。