……どのくらいそうしていたか、本音をこぼしたことにだんだん気恥ずかしさを感じてきて、


「……以上、報告でした」


わたしはパッと姿勢を正した。

お姉ちゃんの手をベッドへ戻そうとして……、ひとつ気が付く。


……爪、伸びてきたな……。


細い指先を、わたしはそっとなぞった。


……今度、切りにきてあげよう。

ついでにと言ってはなんだけど、ここに、もうちょっとだけお姉ちゃんの私物を持ってきてもいいかもしれない。

……今まで、どうして気がつかなかったんだろう。


お姉ちゃんが目を覚ましたとき、こうもなにもないと、退屈なはずだ。

なにが必要かなあ、なんて考えながら荷物をまとめる。

不思議と、お姉ちゃんが意識を取り戻す様子を、すんなりとイメージすることができた。

……今までは、それさえも難しかったのに。


膨らんだ風船から空気がすっと抜けるように、胸の内で風が吹いた心地がした。

自分の気持ちを前向きにしてくれる、追い風だった。


「じゃあ、またくるね」


あんまり遅くなると、きっと、おーちゃんが心配する。


最後にお姉ちゃんに笑顔を向けて、わたしは、いつになく清々しい気持ちで病室を後にした。