一刻も早くこの場から離れたいという心とは裏腹に、愛花の前から動けなかった。 このままここにいたら、この手で——。 「おーちゃんじゃなきゃ、だめなの……」 「……愛花」 愛花の震えた声が、頭の芯をさらに刺激する。 「わたしは」 かろうじて保たれていた理性が、愛花によって、崩されていく。 「おーちゃんに触れられたいよ」 ——今すぐ、俺のものにしたい。 愛花の言葉が耳に届いた瞬間、俺はその感情に飲み込まれるように、目の前にある距離を埋めていった。