たまたま鞄のポケットからはみ出ていたそれが目に入って、なんとなしに手に取った。

体育祭のプログラムだとわかって、開催日の部分の文字を追う。


「体育祭、来月なんだな」


洗い物をしてくれている愛花に聞こえるように、少し大きな声で言った。


「そうなの。おーちゃん、その日——」


そこまでいいかけて、愛花は、あ、となにかに気がついた。

おそらく、先に俺の答えがわかってしまったのだろう。

書かれている日付は、平日だった。


「仕事だよね」

「残念ながら」


プログラムを眺めながら、俺は肩をすくめた。


愛花が中学のころは、大学の講義を抜け出して見に行ってたけど……。

去年は結花のこともあって、それどころじゃなかったからな。


「体育着姿のお前、見たかったな」


そう呟くと、返ってきたのは、沈黙だった。

不思議に思ってキッチンに目を向けると、なにやら愛花が苦い顔をしていた。


「……え、なに。その反応」

「だって、なんか……変態っぽくてやだ」