閉じ込めた小さな体が、身をよじる。

柔らかなシャンプーの香りがふわりと鼻をくすぐってきた。


「おーちゃん、……わたし」


聞こえてきた頼りなく震えた声に、俺はまぶたを開いた。

すぐに、こちらを見上げている愛花の瞳とぶつかる。

その目つきは、公園で俺を見つめていたときと、同じ色を浮かべていた。


「わたし、本当におーちゃんのこと、す——」


——俺は咄嗟に、片手で愛花のほっぺを挟んだ。

突き出た唇は、言葉を続けることができなくなって、愛花の声はそこで途切れた。


「……だめ。……言っただろ、俺。考えるって」

「む、う……」


愛花はなにかを訴えるように、もごもごと口を動かした。


——危なかった。

この状況で、その言葉を聞いてしまったら……、俺は今度こそ、自分を保てなくなる。