最もその口から、その声で聞きたかった言葉であって、——また、今は最も聞きたくない言葉でもあった。

目を背け続けてきたはずのそれは、心にすんなりと入り込んできて、俺を満たしていく。

胸元を突き上げるような感覚に苦しくなって、そっと息を吐き出した。

目の前にいる愛花が、ただ愛おしくてたまらなかった。

なにもかも、諦めてしまいたくなった。

今すぐここで抱きしめて、同じ気持ちだと伝えたい。

兄代わりとしてじゃなく、恋人として、こいつのそばに——。


「愛花」


俺はもう一度、愛花の手を取った。

細く小さな手が、弱々しく俺に引かれる光景に、去年の、あの日の出来事が蘇る。

涙を流すその姿が、結花を思って泣きじゃくる姿と重なった。