「樫葉くん」 ビルから出て、外の風を浴びたと同時に、呼び止められた。 振り返ると、杉本さんは俺から視線を背けたまま、神妙な顔つきをしていた。 「わたし、意地悪なこと言って、愛花ちゃんのこと不安にさせちゃったから。……ちゃんと安心させてあげてね」 それだけ言うと、「それじゃ」と俺を追い越して、杉本さんはさっさとビルを出て行ってしまった。