*** エレベーターの扉が閉まりかけるのが見えて、足を早める。 「すいません、乗ります」 声が届いたのか、扉がもう一度ゆっくりと開いた。 乗り込んだところで、俺は中に立っていた人物に気がついた。 「……お疲れ様です」 「お疲れ様」 杉本さんは、ボタンを見つめたまま言った。 ……気まずい。 あれから、会社の中でもお互いに予定のすれ違いばかりで、まともに会話をしていない。 マンションでの出来事が最後なだけに、どんな顔でいればいいのかわからなかった。