「でも、お姉さんのほうは、ただの、って雰囲気じゃなかったよ。……叩くくらいには」
わたしのツッコミに、おーちゃんはさあ、と肩をすくめて見せた。
「彼女がいるか聞かれたから、いないって本当のこと言っただけ。そしたら俺のこと送るってうるさくて、勝手についてきたんだよ」
「……ほんとかなあ」
わたしがため息混じりにそう言うと、おーちゃんは心外だって目を向けてきた。
だって、酔ったときのおーちゃんを思い浮かべると、いささか怪しいよ。
「先輩が彼女になってくれたら嬉しいですね」なんてことをうっかり言っちゃいそうなくらいには、ふにゃふにゃだったもんね。
「第一、前から言ってるだろ。今は彼女とかそういうの、つくる気ねーの」
おーちゃんは慣れた手つきで、フライパンの上のふわふわ卵を、お皿に盛り付けたチキンライスの上に乗せた。
「……それ、どうしてなの?」
「お前がいるから」
おーちゃんは、ごく当たり前のことだというように、わたしを見ることなくさらりと言った。
「え……」


