「……おーちゃん、わたしのこと、ベッドまで移してくれたの?」
「ん。起きたら床に転がってたから。いやー、死体かと思ってびびった」
「……ご迷惑をおかけしました……」
わたしは言いながらおでこを冷蔵庫にくっつけて、はあ、とため息をついた。
床で寝ちゃってたんだ……。
しかもそのままベッドまで運んでもらっちゃうなんて、最悪だ。
おこちゃまな迷惑、かっこ悪い……。
自己嫌悪に襲われて、そのままゴン、とおでこを打ち付けていると、
「はい、邪魔」
ぐい、と押しのけられる。
どうやら卵を取りたかったらしい。
「昨日、悪かったな」
「え?」
突然謝られて、わたしは首を傾げた。
おーちゃんは卵を割りながら、ん、と顎でゴミ箱を指す。
そこには、昨日食べた、コンビニのお弁当の残骸。
「作るのめんどくさかっただけだよ」
「そうじゃなくて」
おーちゃんは汚れた手を洗ってから、その大きな掌をわたしの頭に乗せた。
そのまま、わしゃわしゃっ、と撫でられる。
「……ひとりで食わせて、ってこと」
あ……。
意味を理解してから、胸の中に心地よさが膨れ上がった。
……本当にもう、この人は……。
ツン、と鼻の奥に小さな痛みを感じてしまったわたしは、声を出さずに首を振った。


