マンションですれ違うたび、苦労をしているはずなのにいつも凛としている姉の横顔は、母さんと重なって見えて。

寂しいはずなのに、いつも無邪気な笑顔を姉に向けている妹には、親近感が湧いてしまっていた。

話したこともないまま、俺はただの『お隣さん』である彼女たちを、一方的に気にかけるようになっていた。

そして、大学の講義で、偶然隣に座っていた彼女——梼原結花の姿に気がついたとき、俺は思わず、声をかけていた。


——それが、俺と彼女たちの出会いだった。