ちょうど俺が小学校に上がったころに、両親が離婚した。

俺は母さんに連れられ家を出て、それからは女手一つで育てられた。

自分が他とは少し違う家庭環境なんだと実感したときは、寂しくもあったし、恥ずかしいという思いもあったけど、母さんとふたりきりの生活は、俺にとっては、ちゃんと幸せなものだった。

ただ、自分には父さんがいなくて悲しいという気持ちよりも、俺のせいで母さんが苦労をしなくてはならないことが、悲しくて仕方なかったのを覚えている。


……だからなのか、大学生になって一人暮らしを始めた俺は、隣に住んでいる姉妹の存在が気がかりでしょうがなかった。

ランドセルを背負う少女と、恐らく学生であるその姉以外に、隣のドアを開けて部屋に出入りする誰かの姿を見たことはなかった。


——まだ若いのに、ふたりで暮らしてるのか。


なにか事情があるのだと、なんとなく感じとることができた。