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……ふと、カチャカチャと音が聞こえた。
腰のあたりがくすぐったくて、眉を寄せる。
しばらくして腰回りを締め付けていた力が、弱まって——。
すぐにベルトが緩められたのだと理解して、俺の頭と目は、一瞬にして冴え渡った。
ズボンに触れている愛花の手首を、反射的に掴む。
「……なにしてんの」
自分から発せられた声は、思ったよりも強いもので、愛花が体を強張らせたのがわかった。
「なにって、苦しそうだから、ベルトを外そうと……」
か細い声が答える。
……ああ、なるほど……。
どうやらスーツを着たまま寝ていたらしい。
とりあえず納得はできたけれど、俺はそのまま、動けずにいた。


