ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



***


……ふと、カチャカチャと音が聞こえた。


腰のあたりがくすぐったくて、眉を寄せる。

しばらくして腰回りを締め付けていた力が、弱まって——。

すぐにベルトが緩められたのだと理解して、俺の頭と目は、一瞬にして冴え渡った。

ズボンに触れている愛花の手首を、反射的に掴む。


「……なにしてんの」


自分から発せられた声は、思ったよりも強いもので、愛花が体を強張らせたのがわかった。


「なにって、苦しそうだから、ベルトを外そうと……」


か細い声が答える。


……ああ、なるほど……。


どうやらスーツを着たまま寝ていたらしい。

とりあえず納得はできたけれど、俺はそのまま、動けずにいた。