食欲をそそる香りに誘われて、わたしはぱちりと目を覚ました。


「……あれ?」


体を起こすと、わたしはベッドの上にいた。

きちんと掛け布団までかかっている。


わたし、ベッドで寝たっけ……?

確か昨日は、ソファで眠っちゃったおーちゃんを眺めてそのまま……。


「お、起きたか」


必死に思考を巡らせていると、おーちゃんがキッチンからひょこりと顔を出した。


——しまった。


慌てて時計を確認すると、もうすぐお昼になってしまうころだった。


完全に寝坊だ。

せっかくのお休みだから、疲れてるおーちゃんのために、わたしがご飯作るつもりだったのに……。


「……おはよう」


ボサボサであろう髪を撫で付けながら、キッチンに向かう。

お気に入りのコップを手に取ると、わたしはお水を一杯飲み干した。