なんて考えていたら、パシンッ、という乾いた音と、頬への衝撃。
一歩遅れてヒリヒリしてきたそこを、俺は杉本さんに引っ叩かれていた。
……忘れてた……。
「最っ低!」
思いきり吐き捨てられて、呆気にとられる。
身を翻して遠ざかっていく彼女の後ろ姿を、俺は静かに見送った。
……やっぱり、杉本さんって、飲むと結構気が強くなるんだな……。
会社での女性らしいふんわりとした雰囲気とは、大違いだ。
……とりあえず、俺の作戦は成功したわけで。
少しだけ強引なやりかただったかもしれないけど、ようやく帰ってもらえることができた。
だけど、なかなかに——
「……いてえ」
心から呟くと、隣から、呆れたようなため息が聞こえた気がした。


