ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



よし——。


起きてくれていたことに安堵し、感謝したのも束の間、


「……おかえり、おーちゃん」


なぜだか不機嫌そうに顔を覗かせた愛花に、俺は、——くらりと目眩がした。

どこからどう見ても、愛花は風呂上がりだった。

濡れた髪。
血色のいい頬。
華奢な体に身につけているのは、……俺のTシャツ。


——おいおい。


心の内の動揺を悟られないように、なんとかポーカーフェイスを保つ。

笑顔でただいま、と答えれば、失礼なことに顔をしかめられた。


……悪かったな、酔っ払いで。

それより、なんなんだよ……その格好は。

そんな警戒心ゼロで出迎えて、もしもここにいるのが俺じゃなかったらどうするつもりだよ。

ほんと、勘弁してくれ……。

これは後でお説教だな。