「ちょっと、杉本さん……」
「……上まで付いてく」
「……」
俺は天を仰いだ。
……仕方ない。
諦めて、開き直ることにしよう。
……こうなったら最後の手段を使うしかない。
いずれにしても俺には、杉本さんを家にあげるという選択肢はないのだから。
自分の部屋の前までやってくると、俺は迷わずインターホンを押した。
「あの、樫葉くん、一人暮らしでしょ? チャイムじゃなくて、鍵を——」
「んや、大丈夫なんで……」
不審がる杉本さんをなだめながら、俺は目の前のドアが開くのを待った。
「なにが大丈夫なの、もー」
杉本さんが我慢できないというように俺の手から鞄を奪った直後、ガチャリ、と鍵の開く音がして、ドアが開いた。


