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体を揺さぶられて、俺は目を覚ました。
「樫葉くん、駅、ついたよ」
聞こえてきた声に、重い瞼を何度か瞬かせる。
頭も目も冴えないうちに、引っ張られるまま、俺は電車を降りた。
ひんやりとした風が頬を撫で、見渡せば、見慣れた最寄り駅に立っていた。
「大丈夫? ……もう、こんなにお酒弱いなんて知らなかった」
覗き込まれて、小さく驚く。
「あれ、杉本さん……なんでいるんですか」
「樫葉くんが心配だからでしょ」
もう! と腕を組み、俺を見る杉本さんは、いつもより姉御肌だ。
ほんと、なんでいるんだ……。
状況的にどうやら新歓の帰り道らしいけれど、店に入ってしばらくしたところから、ほとんど記憶がない。


