ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



***


体を揺さぶられて、俺は目を覚ました。


「樫葉くん、駅、ついたよ」


聞こえてきた声に、重い瞼を何度か瞬かせる。

頭も目も冴えないうちに、引っ張られるまま、俺は電車を降りた。

ひんやりとした風が頬を撫で、見渡せば、見慣れた最寄り駅に立っていた。


「大丈夫? ……もう、こんなにお酒弱いなんて知らなかった」


覗き込まれて、小さく驚く。


「あれ、杉本さん……なんでいるんですか」

「樫葉くんが心配だからでしょ」


もう! と腕を組み、俺を見る杉本さんは、いつもより姉御肌だ。


ほんと、なんでいるんだ……。


状況的にどうやら新歓の帰り道らしいけれど、店に入ってしばらくしたところから、ほとんど記憶がない。