……そりゃあ、見せないようにしてるからな。
見せてしまったら、最後だ。
少しでも俺がそういう素振りを見せてしまったら、……もう、戻れなくなる。
画面を操作して、文字を打つ。
〈今日遅くなる〉
メッセージを送信すると、不貞腐れたあいつの顔が頭に浮かんできた。
……あいつ、寂しがるかな。
できるだけ、飯をひとりで食わせることはしたくなかった。
けれど会社の付き合いも、疎かにするわけにはいかない。
俺は少し考えて、
〈ドラマ録画しといて。先に見るなよ〉
とさらにメッセージを付け足した。
……なんて。
寂しいのは、もしかしたら俺のほうなのかもな。
すっかり深みにハマって抜け出せなくなっている自分を、心の中で嘲笑う。
〈わかった!〉
そう返事が届いたのを確認してから、俺は再びパソコンへと向き直った。


