「いててて……。あのなあ、俺は同じ男として、心配なんだよ。普通、遊び盛りの大学生活でなにもなかったなんて、そんなのおかしいだろおっ」
涙ぐみながら訴えてくる萩原の椅子を、俺は足で遠ざけた。
「知らねえよ。休憩終わり。さっさと自分の席に戻りやがれ」
「ひどいっ、冷たいっ、冷酷男っ」
「うるさ」
ぶーぶー喚く萩原を無視することにして、俺はパソコンに向き直った。
……。
……なんか、隣からの視線がすごい。
「ねえ、樫葉くん。ほんとに彼女いないの?」
ぱっちりとした大きな目が、杉本さんから向けられる。
それは完全に、好奇の眼差しだった。
なんだか居心地が悪くなって、俺は鼻の頭をかいた。
「……はい。いませんけど」
「そうなんだ」


