顎に手を添えられ、上を向かされる。
視界いっぱいに、辛そうに眉を寄せた康晴の表情が見えた。
「……好きだ」
その囁きが耳に届いたときには、すでに唇が重なっていた。
突然のことに、一瞬、思考が遅れる。
息がつまりそうな苦しさを感じて、徐々に頭が追いついた。
「ん……、っや」
慌てて顔を背けて、康晴の体を精一杯押し返す。
「やだ、こうせ……」
「好きなんだ」
少し生まれた距離を再びつめるように、手が首の後ろに回り、ぐいっと引き寄せられた。
もう一度唇が触れて、わたしは必死に身をよじる。
段差に足が引っかかって、そのまま床へと倒れ込んだ。


