ぐっと力強く腕を掴まれ、そのまま部屋の中へ押し込まれる。
後ずさったわたしの手から松葉杖が抜け落ち、カランッと大きな音を立てた。
支えを失ったわたしは、腕を引かれ、よろけながも壁に押し付けられた。
逃げ道が塞がれるように、康晴の後ろでドアが閉じる。
「……変だと思ったんだよ。……昨日、お前の家の玄関に入ったとき、男物の靴が1個もなくて……」
ぎゅう、と掴まれた腕に力が込められた。
その手は微かに、震えている。
「……最初は俺だって、本当に諦めて、友達でいようと思ったんだ。……でも、お前の言ってた好きなやつが、兄貴なんだって思ったら、お前のそばにいれば、……俺にも、まだ……」
頭上から落とされる声で、顔を見なくても、康晴が傷ついているのがわかってしまった。
「嘘だとも知らずに……俺、バカだな……」
自嘲気味に絞り出された言葉に、胸が詰まる。
喉が腫れ上がってうまく呼吸ができなかった。


