スヤスヤと眠るおーちゃんのそばに座って、その寝顔を眺める。

わたしよりも随分と年上のはずなのに、どこかあどけなさが残っていて、……ものすごく、愛おしい。


さらりとした前髪に触れてみる。

少しだけ眉間にしわが寄ったのを見て、ふへ、とだらしない笑みがこぼれてしまった。


「……おーちゃん」


そっと呼んでみる。
返事は、なかった。


……寝てる、よね……。


トク、トクと弾む心臓がこれ以上暴れ出してしまわないよう、わたしは慎重に、ゆっくりと、顔を近づける。

そしてそのまま、……おーちゃんの唇に、唇を重ねた。


「……すき」


たまらなくなって、震える声でそう言った。



『わたし、……好きな人、いるから』


放課後、わたしのその言葉を聞いた康晴の表情を思い出すと、とても悲しくなった。

それでもこの想いだけは、胸の奥の、深い深いところまで根付いてしまっていて、……わたしにも、もうどうすることもできないのだ。