ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



「……わたしがこっちにいるって、よくわかったね」

「あいつに送ってもらったなら、こっちだと思って。……足、怪我したんだって?」

「うん……。康晴と話したの?」

「挨拶程度だけどな」


おーちゃんは玄関に置いたままだったわたしの荷物を掴むと、軽々とわたしを肩に担いだ。

ぐらりと揺れる体に、慌ててスーツにしがみつく。

わたしの足にかろうじてぶら下がっていたローファーが、ずり落ちて地面で音を立てた。


「ちょ、待って待って! 怖い! 落ちる!」

「落とさねーよ」

「すぐそこまでは、自分で歩けるってばっ」

「あんま暴れると、ぱんつ見えるよ」

「エッ」


パッ、と片手でスカートを押さえるわたしをそのままに、おーちゃんは305号室へと移動した。