ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



「……うん。ありがとう」

「じゃ、俺は、これで」

「ほんと、ありがとう。またね」


ふたりの間を遮るように、パタン、とドアが閉じられる。

わたしはそのまま、ぽつんと玄関に立ち尽くした。

真っ直ぐだけど、どこか苦しそうな康晴の表情が、脳裏に焼き付いて離れなかった。

耳の奥で、テープレコーダーのように、誰かの声が響いた。