ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


心底驚くわたしをよそに、目の前の彼女は続ける。


「わたし、少し前に山名先輩に告白したんです。でも、好きな人がいるから、って……」

「……」

「フラれたけど、その人のことがまだ好きだって言ってました。だから……忘れられるまで待つ、って言ったんです、わたし。けど先輩には、俺も同じだからやめたほうがいいって断られて……」


……同じ……?


女の子は、ぎゅっと学ランの裾を握りしめた。


「その好きな人が、叶わない恋をしてるかもしれないから……辛い思いをしてるかもしれないからそばにいたい、って、言われたんです」


わたしの喉が、ひゅっと音を立てた。


「わたし……そのとき、自分のことより、山名先輩に幸せになってほしいって思って……。だから、お願いします。叶わないなら……少しづつでもいいから、ちゃんと山名先輩のこと、見てあげてください」