「はい」
返事をすると、少し大きめの学ランを羽織った女の子が、ひとり顔を覗かせた。
上履きの色から、彼女が1年生だとわかった。
女の子はわたしに軽くお辞儀をすると、キョロキョロと室内を見渡す。
「五十嵐先生なら、テントのほうだと思うよ」
「あ、はい……」
わたしの言葉を聞いても、女の子が保健室から出る気配はなかった。
不思議そうに見ていると、
「あの、先輩……。騎馬戦のとき、……山名先輩に、だっこされて運ばれてた人ですよね」
……だっこ……。
わたしは思わずその言い方を訂正したい衝動に駆られたけれど、ぐっと我慢した。
「えと、そうみたいだね……」
おかしな返事になってしまったけれど、意識がなかったんだからしょうがない。
……やっぱり、かなりの人に見られてたのかな……。
うう、恥ずかしい。
だけど、なんでそんなことわざわざ……。
と、そこまで考えて、わたしはあれ、と思った。
もしかして、この子——。


