なにやら言いにくそうに、康晴は人差し指で鼻の下をこすった。


「あー……、なんか、デレデレした顔で3年の先輩に写真せまってた」


デレデレ……。


わたしは美月の緩みきった顔を思い浮かべる。


お気に入りの先輩がいたなんて話、わたし、聞いたことないけど……。

……次に会ったときに、問い詰めなきゃだ。


「美月ってば……急いでるわけじゃないんだし、なにも康晴に頼むことないのに」

「いいっていいって」

「みんな集まってるけど……。こっち来てよかったの?」


グラウンドの端に、白組団員が集まっているのが見えた。


「へーき。みんな負けて落ち込んでる団長慰めるのに夢中だったから、抜け出してきた」

「ちょ、だめじゃん。ちゃんと慰めてあげなきゃ」


団長の大きな背中が小さくなっているのを想像して、つい顔がほころんでしまった。


3年生にとっては最後の体育祭だもんね。

勝てなくて、残念だったな……。


話したこともないけれど、白組の一員として、ちょっぴりもどかしい気持ちが生まれる。