ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-


三人だけの保健室がなんとも言えない空気に包まれて、グラウンドから、一段と大きな歓声がやけに大きく響いた。


……あ、騎馬戦、決着ついたのかな……。


ぼんやりと考えたわたしは、つい窓の外を確認する。

康晴は、気を取り直したように五十嵐先生の背中をぐいぐいと押しやった。


「……ほら、もうテントのほうに戻ってくださいよ。こいつは大丈夫そうなんで。他にも怪我してる生徒、いるんでしょ」

「そうそう、そうだった! じゃあ、梼原さんは無理しないでね」

「はい、ありがとうございます」


小柄な後ろ姿が、トタタタ、と半ば逃げるように保健室からいなくなる。

ドアが閉まる音とともに、康晴は脱力してベッドの隣の椅子に腰を下ろした。


「……あの、ありがとう」

「え?」

「お姫様だっこ」


わたしがニッと笑うと、康晴はみるみる内に顔を赤くした。