「え」
康晴が?
驚いて見ると、誤魔化すような笑いがへらりと返ってくる。
「ちょっと、言ってよ。……ごめん、重かったでしょ」
「いや、別に……」
眉の上をかきながら、康晴が目を伏せる。
その様子に、五十嵐先生がふーん、と意味ありげな視線を送ってから、手を口の前にかざして楽しそうにわたしに向き合った。
「もうね、山名くん、まるで王子様みたいだったんだから。梼原さんが倒れたの見て、一目散に駆け寄って……」
「ちょっと、センセ」
「意識失ってるから、ここまで運ぶって言ったら手伝ってくれたのよ」
「もういいってば……っ」
「——お姫様だっこして」
「……」
「いい彼氏ね」
「……先生……」
五十嵐先生のジャージを引っ張ったまま、康晴ががっくりとうな垂れた。
「俺たち、付き合ってないんで……」
「……あら、そうなの?」
「……」
先生はあからさまに、やらかしたかしら、という顔をして固まった。


