ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



「え」


康晴が?


驚いて見ると、誤魔化すような笑いがへらりと返ってくる。


「ちょっと、言ってよ。……ごめん、重かったでしょ」

「いや、別に……」


眉の上をかきながら、康晴が目を伏せる。

その様子に、五十嵐先生がふーん、と意味ありげな視線を送ってから、手を口の前にかざして楽しそうにわたしに向き合った。


「もうね、山名くん、まるで王子様みたいだったんだから。梼原さんが倒れたの見て、一目散に駆け寄って……」

「ちょっと、センセ」

「意識失ってるから、ここまで運ぶって言ったら手伝ってくれたのよ」

「もういいってば……っ」

「——お姫様だっこして」

「……」

「いい彼氏ね」

「……先生……」


五十嵐先生のジャージを引っ張ったまま、康晴ががっくりとうな垂れた。


「俺たち、付き合ってないんで……」

「……あら、そうなの?」

「……」


先生はあからさまに、やらかしたかしら、という顔をして固まった。