「あんな戦場ど真ん中で、のろのろしてっからだぞ」
「いや、一瞬だったんだよ。もうなにがなんだかわかんなくて……」
「だってお前、落ちて来るやつ受け止めようとしてんだもん。なんでだよ、逃げろよ」
おかしそうに言う康晴に、わたしはぷすんといじける。
「必死だったの。自分が落ちたらすごく痛くて……その子も痛いだろうなって思ったら、体が勝手に」
「バカだなあ。ま、愛花が鈍臭いのは今に始まったことじゃねーけど」
「……うるさいな」
康晴を睨んだとき、シャ、と音がして仕切りのカーテンが開かれた。
養護教諭の五十嵐先生が、少し童顔な顔を覗かせる。
「よかった。それだけ普通に話せるなら、大丈夫そうね」
「先生……。すみません、ここまで運んでもらっちゃって」
確か、外には救護用テントもあったはずだ。
けれどわたしが気絶をしていたから、ベッドのある保健室までわざわざ運んでくれたのだろう。
ぺこりと頭を下げると、五十嵐先生は優しい笑顔を浮かべた。
「いーえ。軽い脳震盪を起こしちゃっただけだと思うけど、ここで休んで様子を見ましょう。……それと、運んでくれたのは山名くんだから」


