ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



「あんな戦場ど真ん中で、のろのろしてっからだぞ」

「いや、一瞬だったんだよ。もうなにがなんだかわかんなくて……」

「だってお前、落ちて来るやつ受け止めようとしてんだもん。なんでだよ、逃げろよ」


おかしそうに言う康晴に、わたしはぷすんといじける。


「必死だったの。自分が落ちたらすごく痛くて……その子も痛いだろうなって思ったら、体が勝手に」

「バカだなあ。ま、愛花が鈍臭いのは今に始まったことじゃねーけど」

「……うるさいな」


康晴を睨んだとき、シャ、と音がして仕切りのカーテンが開かれた。

養護教諭の五十嵐先生が、少し童顔な顔を覗かせる。


「よかった。それだけ普通に話せるなら、大丈夫そうね」

「先生……。すみません、ここまで運んでもらっちゃって」


確か、外には救護用テントもあったはずだ。

けれどわたしが気絶をしていたから、ベッドのある保健室までわざわざ運んでくれたのだろう。

ぺこりと頭を下げると、五十嵐先生は優しい笑顔を浮かべた。


「いーえ。軽い脳震盪を起こしちゃっただけだと思うけど、ここで休んで様子を見ましょう。……それと、運んでくれたのは山名くんだから」