ふたりぐらし -マトリカリア 305号室-



「今日の康晴が愛花と一緒にいるところ見たら……さすがの『お兄ちゃん』でも、ちょっとは危機感、芽生えたんじゃない」

「え……」

「大人っぽいのも魅力的だけどさ、ああいう学生らしいかっこよさも、いいよね」


美月の言葉に、わたしはこっそりと、応援団の配置につき旗を振る康晴を盗み見た。

選手を見送る横顔は真剣なもので、凛とした美しさがある。

ピンと伸びた背筋と背中で結ばれたタスキに、意外に肩幅広いんだな、などとぼんやり思った。

ふと、康晴の瞳がこちらに向けられて——、わたしはぐりんっ、と首を回した。


「……うん。確かに、かっこいい」

「だよね」


もう一度振り返ると、……遠くてよくわからなかったけれど、康晴がまだこちらを見ていたような気がした。