人の合間を縫って入場門の近くまでやってくると、すでに待機列ができ始めていた。

係りの人から、身につける帽子とゼッケンを受け取り、そのまま選手の集まりにかたまって腰を下ろそうとして、あ、と声を上げる。


「おう」


列の最後尾に、学ラン姿に白いハチマキを身につけた康晴が、大きな旗を片手に立っていた。

その左腕には、『応援団』と刺繍の入った腕章がついている。


「お前ら騎馬戦、でるんだ」

「もしかして康晴が担当なの?」

「そうそう。ばっちり応援しててやるから、勝てよな」

「うん、任せといて」


ビシ、と親指を立て合ったわたしと美月のハチマキの色は、同じ白色だ。


「……それにしても、なるほど。体育祭マジックとはこういうことね……」


ふむ、と顎に手を当てる美月が、上から下まで康晴をジロジロ眺めだす。


「……なんだよ」

「いやあ。見違えちゃうな、と思って。ね、愛花」

「うん。いい感じ」


ふたりでニヤニヤしながら再びグーサインをだすと、ほんのり頬を染めた康晴が、居心地悪そうに眉の上をかいた。