そんなことない、と言おうとしたのに、静かにパスタを食べていた狼くんが「それはもう大変だったよ」と割りこんできたのでギョッとしてしまう。
「仁葵ちゃん、知らない男に声かけられて、お父さんの知り合いだって騙されてついて行きそうになってたんだよ」
「そんな……!」
「ちょ、ちょっと狼くん。そんなことわざわざ言わなくても――」
「俺がたまたま見つけなかったら、ホテルにでも連れこまれてただろうね」
寧々子ちゃんは両手で口を覆い、顔を真っ青にして震え出した。
危険とは程遠いところで生きている寧々子ちゃんには刺激が強すぎるから、秘密にしておこうと思ってたのに。
勝手に話しちゃうなんてひどい。
「でも私は無事だったし、大丈夫だよ」
「全然大丈夫じゃないよ。仁葵ちゃんはもうちょっと人を疑うことを覚えたほうがいいね」


