そうだ、油断しちゃいけない。
私には『お見合い、婚約、そして結婚という流れを阻止する』という大事な目標があるんだから。
ひとりやとても達成できそうにない目標だけど、隣りに狼くんがいてくれると、なんとかなりそうな気がしてくる。
私のために彼氏役を熱演してくれる狼くんを信じて、私も彼の恋人になりきってみせる!
「狼くん。私、がんばる!」
「うん。まあ、気楽にいこうよ」
「……狼くんはもうちょっと、緊張感持ってもいいと思う」
ふああ、とあくびをする狼くんを見ていると、力が抜ける。
私もこれくらいマイペースを貫けば、おじいちゃんや剣馬に振り回されることもなくなるんだろうか。
「私も眠そうにしてみようかなぁ……」
思わずそんな呟きを漏らす私に、狼くんは不思議そうに首をかしげていた。